(この内容は2013年10月26日にアップした内容です)

こんにちは。台風の本島上陸を免れてホッとしています。

不器用な私、認知症一色だった数ヶ月を経て、最近もう一つ非常に気になっていた宿題に着手しました。それは、グラム染色。

2年前に、当院はよりよい感染症診療のツールとして、グラム染色を導入しました。あれからグラム染色は感染症診療の道しるべとして日々使われています。肺炎や尿路感染でグラム染色を行うことが当然になった、染色もきちんと出来るようになった、そして顕微鏡を覗いて…その結果が臨床行動に100%反映されているか?それが今回の‘宿題’です。

典型的なケースはよいのです。顕微鏡を交互に覗きながら検査技師の岡安さんとニッコリ。筑波大からの学生さんがいれば一緒に顕微鏡を覗き、目の前の結果からどんな抗生剤を選ぶかをディスカッション。数日後にフォローアップのグラム染色を行い、きちんと薬が効果を上げていることを確認できます。こんな風にいくと、非常に清々しい。しかし、いつも竹を割ったようにスパッといく訳ではありません。正直、自分の想定した結果と異なる結果が目の前にあり、どう解釈すればよいのかわからない時も。そんな時は、2人でう~ん、あぁでもこうでもないと話し合うのですが、結論が出ずに奥歯に物が挟まったような気持ち悪さが残ることもあり。グラム染色の達人が近くにいらして、その場ですぐに指導を仰げれば…ここはどうなんだろう?あれはどうなんだろう?と日々の疑問が積もっておりました。

実力を上げるための対策の一つとして、これまでグラム染色師匠である相原先生の主催する『グラム染色中級試験』を受けてきました。これは公的な資格ではなく「茶道や華道のお免状のようなもので、楽しみながら実力をつけてもらうことが狙い」だそうです。初級資格を1年前に取り、現在中級に挑戦中。定期的にメールで送られてくるWebスライドの所見を取り(i-viewerというソフトで、目の前でスライドを覗いているようなリアルな世界が広がり、初めて見た時には感動しました)所見用紙を先生の元に送り返すと、採点されてスコアがつくのです。年間5回のテストで平均点が80点以上で合格。

実は私、既に5回中4回は受講済み。点数こそ現時点で何とか規定ラインを満たしているものの、回数を重ねることで問題点がくっきりと浮き彫りに。菌種の同定です。同じことを相原先生にも指摘されておりました。検査技師と異なり、医者は圧倒的に顕微鏡を覗く機会が少なく共通のウィークポイントなのだそうです。
最近改めて細菌ごとの特徴をノートにまとめ直し、関連する感染症の教科書を読み返した時点で、機は熟した、と感じました。これから先じーっとアトラスを眺めていても、これ以上の進歩は望めない。独学の限界かもしれません。今こそ十分な知識を持っている師にマンツーマンで指導を受ける時期です。

そのような訳で、10月17日東京でトレーニングを受けてきました。
午前中は、先生の豊富なコレクションスライドから、菌種の同定に絞って次々と説明を受けていきます。午後からは、私が持参した実際の症例スライドを見て頂き、自分の診断や解釈、治療についてディスカッション。
研修を終えた感想としては…言葉で表せないほど濃厚で充実した、豊かな時間でした。

菌種の同定については、『点と点がつながって、線になった』イメージ。単発でAという菌はこう、Bという菌はこうという知識だったのが、じゃあAとBの鑑別ポイントはどこか、Aと似ていて間違いやすい菌は他にどんなものがあるか、臨床の場ではどのように判断するか、治療は行うべきかという周辺知識が豊富に与えられ、頭が非常にクリアになりました。これまでいまいち特徴をつかみ切れなかった細菌についても、いくつかのポイントを教えて頂いてその目で見てみると、あたかも特殊な眼鏡を装着したようにくっきりと浮かび上がるように見えてくるという感動体験も。

マンツーマン指導のよい所は、自分の都合でいくらでも脱線(?)可能なところです。日頃の臨床に溜めに溜め込んだ疑問を、関連するスライドを見ながらここぞとばかりにぶつけさせて頂きました。どの方向からぶつけてもしっかりと受け止めて下さり的確に返して頂けるという空間には、何とも言えない心地よさがあります。お話をすればするほど知的好奇心が刺激されると言うか。自分の症例についても、目から鱗のご指摘もあり、グラム染色の可能性、奥の深さを改めて思い知りました。

『一回で片をつけようと思うな。臨床状況とマッチしない所見であれば、何度でも検体を取りなおせ』『感染症は須らく日和見的である』などの診療スタイルに関わる格言あり。これまで培養結果で目にして右往左往していた弱毒菌についても『弱毒菌が原因菌となりやすい現代において、培養には限界がある』からこそグラム染色から総合的に判断する重みづけが必要なのだと、非常に勉強になりました。『検体を粗末に扱うことは、患者さんを粗末に扱うことと同じ』というのも、以前相原先生から教えて頂いた言葉で、今でも肝に銘じています。

1日が終わる頃には、目の前の霧が徐々に晴れていくような清々しさと、疲れているにも関わらず明日からまた頑張っていこうというエネルギーで満ち足り、高揚した気持ちで会場を後にしました。(教えて頂いたあれやこれやを考えながら駅に向かい、慣れない東京で道に迷ったのも仕方がないことです。)

‘次の一手’は、この収穫を翌日からの診療に生かすこと。知識の再整理はもちろんのこと、今後も継続的にご指導を頂けるシステム作りのために、顕微鏡用カメラの購入を画策中。現在は情報収集の段階ですが、カメラが手に入り日常的にご指導を仰ぐ環境を心待ちにしています。
一日お付き合いを頂いた相原先生、会場をお貸し頂いたスギヤマゲン様、貴重な機会を本当にありがとうございました!