さてさて、今日のテーマは、題して『男の介護』です。(コウノメソッドとは直接関係ありませんが、介護つながりで。)とある日の訪問診療コースの患者さん数名の介護環境に、この共通のキーワードがあり、面白い特徴が浮かび上がってきたのでご紹介させて頂きます。

 在宅介護(家で介護を行うこと)において、介護をする人は、嫁や妻など圧倒的に女性が多いです。私の印象では9割くらいが女性ではないでしょうか。男性は仕事をしていることが多い、伝統的に家事育児介護は女の仕事とされている、そもそも適性がない(?!)などが一般的に挙げられている理由でしょうか。その中で少数派である男性の介護。だからこそなのか、かなり濃いキャラクターで介護を展開しており、無視できない存在感を放っているのです。

男の介護の特徴その1)数字にこだわる

 ナースステーションの温度板も真っ青の、詳細な数字の記録を見せられることが多いです。体温・血圧・脈拍数などのバイタルサインを1日4回も5回も測っていたり、血糖、飲水量や尿量などのインアウトまで時間ごとに記載してあって驚きます。男性はやはり理詰めで数字から入るのだな~と実感。
その割には、認知症の徘徊が顕著な妻(被介護者)について、
「この頃ちょっと物忘れするようで心配なんですが…。」
と今さらそこ?!な問題提起をしてくれるのがご愛嬌だったりするのですが。
女性の介護者からこういう記録物を見せられることはあまりないのです。女性は何となく顔色が優れない、言葉数が少ないなど、大局で全身状態をはかる傾向があります。子育てを経験しているからでしょうか。(そう言えば、うちの夫も赤ん坊のミルクを溶かすお湯の量に異様に拘っていたような…)

男の介護の特徴その2)介護がライフワーク?
母親の介護のために、サイドテーブルや点滴台を自分で溶接して作ってしまった息子さんがいました。妻のベッドをちょうどいい高さに調節するため、パイプ足を電動カッターで切ってしまった夫もいます。とにかく創意工夫を欠かさず、いかに良い環境を作れるか試行錯誤の日々。かなりの力技も辞さない熱意があります。

女性介護者ではあまりこういうことにはなりません。工夫と言っても、せいぜいペットボトルのキャップに穴をあけたり、針金ハンガーを曲げて障子の桟に引っ掛ける程度。ある物の中で出来る範囲で…と力が抜けているのです。そう、女性の介護を一言で言えば「力が抜けている」のだ。悪い意味ではないのです。なんと言うか、生活の一部。淡々と、自然に、やるべきことをやる、と言うような。男性の場合、一大プロジェクトという感じで、とにかく熱い。

正直、その介護ぶりにこう思わずにはいられないのです。
「もしかして…生きがい?」
現に、折に触れてきめ細かい介護をたたえる私達に、
「(介護は)もう、大変なんてもんじゃありませんよ。自分の人生を捧げる覚悟がないと!」
とその大変さをアピールしながら、一方で妙に生き生きしているのは気のせいでしょうか。
少しでもその介護負担を減らそうと、ご兄弟との役割分担を持ちかけても
「いや~、下手に関わる人が増えると面倒くさいので、自分一人でいいです。」
と全てを自分で負おうとする。こういう方は、知らず知らずに頑張り過ぎて、ある日オーバーワークで倒れてしまわないよう、関係者も気をつけて見守らなくてはいけませんね。

 男の介護の特徴その3)従順な被介護者あってこそ

当然と言えば当然だが、介護の姿は単体であるのではなく、それまでの人間関係の最終形態です。それまで劣悪な人間関係で来たのに、いざ介護する状況になったからと言って、じゃあ突然力を尽くして介護して差し上げようとは思わないでしょう。そう考えると、介護者としては少数派である男性が「この人のために介護してあげよう!」と決意するということは、それだけ元気だった頃によくしてもらった、いい関係が築けていたということの何よりの証明。両者に対して心から尊敬の念を覚えます。

 介護者が上で述べたような特徴(熱い思いと強いこだわりを持った介護)を有する一方で、介護される側は、それにぴったりと合う特徴を有することが多い印象が。つまり、いつもニコニコしていて口数少なく、常に感謝し、介護者に口答えをしない。(←これが大事?)
「病院でもないのに、1日3回も血圧なんか測らなくていいよ。もう年なんだから、うるさいこと言わないで好きな物食べさせておくれよ。」
などと言うような生意気なばあさんは、間違いなく夫の献身的介護は望めないのである。

「あぁ…。私はやっぱり夫に介護してもらえそうにないわ。その時は、一緒に老健に入ろうね。」

訪問診療の車の中で、今日も看護師さんとつぶやきながら、病院に帰るのでした。女性の皆さんはどうですか?あなたは‘男の介護’を受けられそうなタイプですか??