こんにちは。冷え込みが厳しくいよいよ本格的な冬という感じですね。今日は、以前『つまりはフェルガードだったのか?』という記事で紹介した80歳台の男性の続報です。

まずは前回のアウトラインを。

『・1年前から温度感覚がおかしい、不定愁訴、殺してくれなどの言動あり。近医で抗うつ薬・ドグマチールなどが処方された。秋頃から転倒が増え顔面打撲・骨折なども。幻視あり。室内をグルグル動き回りじっと座っていることが出来ない。トイレに20回以上行く。

・H25年12月当院初診。歯車様固縮あり。呆然+眠そうで暗い表情でLPCと診断しました。家族の都合により入院での症状コントロールを希望されたが、病棟に上がった途端激昂し同日退院。

・退院時にウィンタミンを処方したが、使用翌日から傾眠強く歩行不可複視・めまい症状も出て1包でもふらつき強く中止。眼症状はリリカの副作用と考え減量してみたが、かえって症状悪化するようでリリカは続けている。一時はフェルガード100Mのみで穏やかになり歩行も改善した。症状改善の理由として、抗うつ薬やドグマチールをやめたこと、リリカやフェルガード100Mが効いたと解釈した。』

その後、私が産休に入った6月頃から再び症状が悪化したようです。胸部圧迫感、頭が重い、めまいなどの症状が強く、昼夜問わず動き回っている状態。落ち着かない状態を、本人は「体が勝手に動く」と説明しています。焦燥感もあり、苦悶様表情で「家に火をつけて俺も死ぬ」という発言もあり早急な対応が必要でした。

ウィンタミンが使えないため、まずは陽性症状コントロールでセロクエル1.5T3×を開始したところ、いくらかは落ち着きましたがまだまだ。ニューレプチルが激しい不定愁訴によいとあり、ニューレプチル(5)1T1×を加えてみました。

先日の訪問診療では、いてもたってもいられず動き回る症状は少し落ち着いていました。心配だった副作用は、傾眠もなくトイレ歩行もふらつきなく出来ているようです。一定の効果は得られているものの、自覚的には「眠くて…」と本人はまだつらそうなため、訪問後にグルタチオン点滴1600mg(在宅)も始めています。

その訪問日のこと。同席していたケアマネ―ジャーの小森さんが、

「先生、ちょっとひっかかるのでこれを…。」

と患者さんの靴下を脱がせて拘縮した足の指、続いて拘縮した手指を見せてくれたのです。

家族にいつからこうなのか尋ねると、認知症症状が出始めた1年前から、徐々に利き手である右手がうまく使えずおにぎりにして食べたり、最終的には左手でフォークを持って食べるようになったことが判明。(筋力の左右差あり)整形外科で頸椎から来ていると言われたこともあり、認知症とは関係がないとご家族も診察では特に言われなかったようです。そのような目で見てみると、姿勢もコタツにつっぷするように前のめりです。以前のカルテにも自分で「歩行が前のめり」と書いてあるではないですか!!この方は、LPC症候群の中でもCBD(大脳皮質基底核変性症)と診断しました。

帰りの車の中で、興奮さめやらぬ頭を整理していて、ようやく気がつきました。ケアマネさん、CBDだとわかっていた…?どう考えてもあのタイミングで私に手と足を見せたのは、そういうことですよね。改めて、仕事ができるスタッフに恵まれている自分の幸せをかみしめました。ケアマネージャーが医者を育て、医者がケアマネージャーを育てる時代に。

自分の中での産休明けの課題の一つが、LPCの中からCBDやPSPを適切に鑑別していくことだったので、今回その最初のステップを踏めたことは素直に嬉しく思います。本格的に取り組んでたかだか1年の町医者が、CBDを診断できる秀悦な教育システムを編み出して下さった河野先生、患者さんを近くで見ていて適切に情報提供して下さるケアマネさん、そして鈍い主治医に身をもって色々なことを教えて下さる患者さんとご家族に、心から感謝します。診断がついてからが勝負。少しでもよい状態に向かい、患者さんの笑顔が見られるよう、がんばります!