COPDという病気を、知っていますか?

COPD(慢性閉そく性肺疾患)は、なんと日本で700万人がかかっていると言われる『肺の生活習慣病』です。原因はタバコに代表される有害物質を長期に渡って吸い込むこと。放置して重症化すると、生活のちょっとした動作で息が苦しくなり、風邪をひく度に呼吸状態が悪くなる。入院をくり返し寝たきりになりかねない、怖い病気なのです。

最近はテレビで特集が組まれるなどクローズアップされるようになりましたが、まだまだ知名度は低いです。なぜ??個人的には、一番の理由は『病気の名前が悪い』せいかと思っています。英語の頭文字の羅列というのが…。COPDは加齢と共に症状が出やすくなりますから、高齢の方にもわかりやすいように、日本語がよいかと思います。そのまま訳すと慢性閉そく性肺疾患なのですが、これでも何のこっちゃ?という感じでいまいちですね。もう少しわかりやすい病名がいくつか提案されています。「タバコ病」専門家の先生は「タバコだけが原因じゃない!」と怒りそう(そして実際その通り)ですが、喫煙者の方へのメッセージ性は抜群です。「肺胞構造破壊病」ちょっと硬い感じはしますが、慢性閉そく性肺疾患よりは実態がイメージしやすい気がします。

COPDは、以前は「慢性気管支炎」「肺気腫」と呼ばれていました。慢性気管支炎は気管支(枝分かれしていく空気の通り道)に炎症が起こり、かぜもひいていないのに咳・痰がらみが続いている状態。そして肺気腫は、肺の先端のブドウの房状の空気を交換する部分が壊れてしまい正常なガス交換が出来なくなった状態です。実際には両者は同時進行で起こるし、2つを明確に分けることは難しい、ということでひとくくりにされて扱われています。

COPDが進行すると『息を吸えるのに吐き出せない』状態になります。その苦しさを試してみるには「息を吸って吸って吸ってめいいっぱい吸ったところで、ほんの一瞬しか吐かずにまたすぐに吸って吸って吸って…」という動作を1分間してみれば、すぐにわかります。えらい目に遭わされた~と思うかもしれませんが、COPDが進行すると、この状態がこの先も24時間たえまなく続くのだということを覚えておいて下さい。現にCOPDが進んだ方は、呼吸苦から会話もままならず、食事も思うように取れなくなります。このつらさから逃れるために眠ってしまいたいと思っても、睡眠さえもうまく取れないのです。外来で「俺はやりたいことをやってさっさと死ぬからいい」などと豪語する方がいますが、そう思い通りにはいきません。COPDは、蛇の生殺しのようにすぐに亡くなることなく苦しい時間が続くという意味で、癌よりもつらい面があります。

COPDは喫煙を続け20でボチボチ発症し始めます。20歳から吸っていれば、40歳前後ですね。更に60歳を過ぎると更に発症する人数が増えていきます。喫煙者の15%が発症すると言われていて、発症しやすさには遺伝子が関与しているようです。2014年現在は、臨床レベルで誰が発症しやすいかを予測することは出来ない以上、予防は「タバコを吸わない」「吸っていたらすぐにやめる」ということに尽きます。「今は症状は特にないし元気です。」と言う方もいますが、症状が出てからでは遅いのです。

既にCOPDと診断されてしまった方は絶望的な気持ちになるかもしれませんが、そのような方は、少しでも状態を悪化させないよう、最善を尽くしましょう。苦しいのを無治療で放置すると、『苦しいので動かずに寝ている➡足腰の筋力が落ちる➡体の免疫力・抵抗力が落ちる➡肺炎などの感染症にかかりやすくなる➡更に呼吸機能が落ちて苦しくなる』という悪循環に陥ります。そうならないためには、適切に薬を使ったり、場合によっては酸素吸入を行い苦しさを和らげた上で、ある程度は体を動かして筋力が落ちないようにすることが負の連鎖に陥らないためのコツです。呼吸が苦しくなりにくい体の動かし方のコツも必ず知っておいた方がよいでしょう。(呼吸リハビリ)感染症の予防(ワクチン接種)や栄養療法も大切。まさに総力戦なのです。上記すべてを一生懸命行っても、タバコを吸っていては意味がありませんので、禁煙は基本のきです。

私達医療者は、どんな段階であっても「もう何もやることはありません」などと言うことなくベストを尽くしますが、早い段階の方がいい状態を保てることは言う間でもありません。介入の第一歩は、禁煙呼吸機能の評価。呼吸機能は、1秒率という数字で判断します。1秒率が健康な人の何歳の肺に相当するかを示す『肺年齢』を出してもらうと、より切迫感がわくかもしれません。自分はどうだろう?と心配になった方は、ぜひ外来でご相談下さい。