こんにちは。すっかりご無沙汰しています。遅ればせながら、今年もどうぞよろしくお願い致します。

さて、先日実習に来ていたつくば大の学生さんから、こんなつぶやきが。

「CBDって…そんなによくいる病気でしたっけ?」

鋭い指摘にドキッとしました。その通りなのです。

その時私が受け持っていた病棟の担当患者さん10名のうち、2名がCBDの方でした。大学病院の神経内科ならともかく、プライマリケアを担う小さな病院でこの患者割合は普通に考えればちょっとおかしい。自分でもそう思います。

CBD(大脳皮質基底核変性症)は神経内科領域の変性疾患で、パーキンソン症状、観念運動失行(手や腕が思い通りに動かない他人の手兆候)、ピック病と区別がつきにくい行動異常が特徴です。筋力や脳萎縮の左右差が他のLPC(レビーピック複合)と区別する一つの鑑別ポイントと言われています。

コウノメソッドを勉強するまでの私にとって、CBDは完全に「イヤーノートの知識」でした。イヤーノートと言うのは、医学生が使う辞書のような厚さの本で、国家試験で取り扱う疾患が一通り網羅されています。卒業して働き始めてからも、聞き慣れない病名を聞いて「あれ、どんな病気だっけ?」という時に引っ張り出して目を通すなど記憶のタグの役割を果たしてくれます。なかなか頼りになる存在ですが、机上の知識で実践を伴わないため、リアルな患者さんのイメージと結びつかないのは仕方ないところ。病名を知っているからと言って診断できる訳ではないのです。総合診療医としての私は、まずCBDのような専門的な疾患は自分で診断することはないだろう、それらしき‘よくわからない症状の患者さん’が来たら専門科の先生に丸投げするのだろうという自信がありました。

しかし、コウノメソッドに慣れてくると、自然な流れでCBDと診断できるのです。もの忘れ外来では必ずレビースコア・ピックスコアをつけるので、両者が高いLPC(レビーピック複合)と診断するのが第1ステップ。その中から、筋力の左右差、前倒れ現象、歯車様固縮が軽いのに歩けないなどの特徴を拾い出していく第2ステップを踏めば、自然と診断に結びつきます。これなら頭の構造が単純な私にも可能です。

当院で1人目のCBDは、先日の記事にアップした方。そして2人目のCBDの方は、精神科に入院中で先月当院に転院された方です。

12年前:右上肢がうまく動かせず家事が一人で出来ない。

9年前:同じことの聞き返しが目立つ。

2年前:外出して戻れない、昼夜逆転。

1年前:物取られ妄想、幻視、その後小刻み歩行、右手の失調

4か月前:椅子に対する執着、易怒性が強く暴力行為

2か月前:立てない、寝床から起き上がれない、食欲低下』

認知症にしては歩行困難が急速で違和感を覚えている、と書かれていました。精神科の先生らしい丁寧な所見の記載からキーワードを拾い出すと、お会いする前から診断のヒントが沢山。

紹介元の先生と電話でお話した時に、

「先生、私はこの方の症状は、大脳皮質基底核変性症ではないかと思うのですが。」

と切り出すと、紹介元の先生は

「そうですか。実は私もそうではないかと思っていました。」

と答えて下さいました。多数決で決めるものではありませんが、完全な独りよがりではないとわかり少し心強く感じたのは事実です。実際に転院されて診察や頭部CTの所見結果は、それに矛盾しないものでした。

この方は残念ながら転院時既に寝たきりのADLであり、食事の摂取量が落ちつつある状態でした。しかしご主人は在宅で介護されたいという希望もあり、当院で先日胃瘻を作り、近日中に自宅に戻る予定です。ご家族の期待に応えるべく、在宅でも全力でバックアップします。

写真は週末に笠間芸術の森から飛び立ったヘリコプターの様子。長男と次男が大興奮でした。5分ばかりの遊覧で北関東を俯瞰。私も広く関東を(日本を?)俯瞰する目を持って診療にあたりたいと思います。

ヘリからの映像