うだるような暑さが続く中、手足口病が流行っています。

ある日の外来。足にポチッと1つ発赤があるお子さんが受診しました。

手足口病 (写真はうちの子ですが。)

「保育園の先生に『手足口病かもしれませんから受診して下さい』と言われて来ました。」

とお母さん。本人はいたって元気です。

先生「手足口病って診断したら、保育園お休みしなくちゃいけないの?」

母 「はい。多分。」

先生「う~む…。」

小児科の先生、ため息まじりに唸っておりました。

手足口病は、その名の通り手と足、口の中に水疱(水ぶくれ)状の皮疹ができる病気。コクサッキーウィルスなど何種類かのウィルスによる感染症で、いわゆる夏かぜの一種です。

風疹や水痘などの感染症は、感染予防法という法律で学校の出席停止が定められており、幼稚園や保育園もこれに準じています。しかし手足口病は、この基準で出席停止すべき疾患に含まれていません。それどころか「症状が安定していれば、出席可」とわざわざ書かれているんですね。

出席停止になる病気とならない病気の差は、いったい何?それはいつまで学校を休めばその先は他の人にうつさないよ、という確証が得られているどうかです。

手足口病は、感染するとのどからは1~2週間、便からは3~5週間排泄され、この間は人に感染させる危険があります。つまりブツブツが出ている間だけ休ませても、感染管理上意味がないのです。じゃあ厳密に1ヶ月以上学校や保育園を休ませるかと言うとそれも現実的ではない、まぁ夏かぜの一種でほとんどの方が重篤にならないのだから、本人がそこそこ元気なら普通に学校に行っていいんじゃない、ということになったのでしょう。冬に軽くコンコン咳していたって出席停止にはなりませんからね。

だけど実際に幼稚園や保育園の現場では、手足口病と診断されると休むよう求められることも多いようです。上記のように本人が元気でピンピンしているのに、足の裏のポチッという発赤をご丁寧に見つけては保護者に受診を勧告し、診断されたらお休みして下さい、という対応も珍しくありません。登園許可証をもらうためにブツブツが消えた頃にもう一度受診しなくてはいけないというルールをしく園もあります。

同じような立ち位置の病気がもう一つ。それは伝染性紅斑(りんご病)

りんご病 頬 手足口病 手

ほっぺが田舎の子のように真っ赤になり、手足にレース状の紅斑が出る感染症です。こちらは、そのような皮膚の所見が出た時点で、既に他の人に感染させる時期は過ぎていることがわかっているため、感染という観点から出席停止が必要ないことは明らかです。それでもやはり、お休みを求められることがあるのです。

何かおかしい、と非常にモヤモヤしております。目に見えるブツブツが出来たり、それに「○○病」なんて名前がつくと、途端に特別扱いされてしまう。それも悪い方に。気持ちはわからないではないのですが、保育園児のお母さんは働いている訳ですから、園児が休まなくてはいけないとなれば、母親も仕事を調整しなくてはなりません。ただでさえ幼児はしょっちゅう熱を出し、仕事と家庭の調整に四苦八苦しているお母さんは多いはず。もちろん本人が高熱を出していたり、口の中のブツブツによって全身状態が悪いとなれば、それもやむを得ないことと思いますが、元気でピンピンしているのに足にポチッで無意味に園を休ませてしまうのは、いかがなものか。全国的に見てものマンパワーの社会的損失とも言えます。登園許可証をもらいに受診、と言うのも無駄な動きで、本人家族も大変な上に病院が余計に混むことになり、本当に調子が悪くて受診している方にも不利益ですよね。

こういう理不尽なこと、案外多い気がします。保育園や幼稚園といった集団で子供を預かる機関と医者のコミュニケーションがもう少しうまく取れるようになれば、いくらか違うのでしょうか。なんとなく心配だから、一応休ませておこうという感覚ではなく、正確な医学的知識に照らして基準を定める。現場の先生方が疑問に思ったりわからないことがあった時に、気軽に医療者に相談できる関係にあればいいですね。

小児科医でもないのに出しゃばり過ぎかとは思いつつ、自分にできることを一つずつ実行していこうと思います。とりあえず、先日食物アレルギーでお世話になった友部小学校の養護教諭の村上先生に、メールを出してみます。