よいネットワークが出来つつあるな…と感慨を覚えた嬉しい出来事が。

個々の物語を大切にするケアをめざす『ナラティブ☆みと』という集まりでつながりがあるケアマネージャーさんから、6月初旬にSOSコールがありました。

80歳台前半の女性です。半年前に「目覚まし時計の音が止まらない」との訴えあり。(実際にはそんな音はしていませんでした)2-3カ月前には娘さんの部屋でしきりに何かを探している動きが見られたようです。

5月になると幻視・妄想症状が悪化し、毎晩のように「あそこに人がいるから電気を消して!!」「みんな避難して~!!」と興奮が著しくなりました。ご本人は‘見えている何か’が怖くてお風呂にも入れない状態。娘さんが同居されていますが、夜中に近隣に住む息子さんも夜中に呼び出さざるを得ないこともあり、家族の疲労も蓄積していたようです。ご家族の発言から、かなり追いつめられている印象があったこと、先日近医でドネペジルの処方が開始されていたと聞いたのとで、早急な対応が必要と判断し、緊急受診となりました。

6月の初回診察では、憔悴したような表情のご本人が。長谷川式は26点とあまり点数は落ちていません。頭部CTでは全体的に萎縮(脳溝の沈み込み)レビースコア12点、ピックスコア2点でレビー小体型認知症と診断しました。まずは幻視妄想症状のコントロールが最優先、ということで抑肝散、それが効かなかった時に備えてセレネースもお渡しし、フェルガード100Mもお勧めしました。

その後どうかな…と気がかりな状態でしたが、経過を意外な形でお聞きすることになりました。長いこと本人とお付き合いのある総合病院の外科の先生が、私に直接ご連絡を入れて下さったのです。

「まず第一に患者さんの不安が消えていたこと、そして、表情が明るくて以前のご本人の表情が戻っていたことに大変感銘を受けました。」

というお言葉を頂き、どれだけ安堵したことか。コウノメソッドの治療の成果を仲間である医師に評価されることって、案外少なかったりします。喜んだり感謝して言葉をかけて下さるのは、圧倒的にご家族と介護現場のスタッフの方が多いのです。そんな中、わざわざお声をかけて下さる医師は、間違いなく患者さんサイドに立って物を見てくれている方だと確信しています。

その後診察室でお会いしたご本人は、先生がおっしゃっていたように初回の憔悴しきって険しい表情とは明らかに異なっていました。上品で柔らかい空気をまとい優しい表情を浮かべていました。今でも幻視妄想が顔を出すことはあるけれど、息子さんいわく「以前とは全然違う。家族にとっては天国と地獄くらい違う。」と。実は息子さん、医師ではないものの同業者だったのです。最初はコウノメソッドという聞いたことがない診療スタイルで、学会が提唱しているのと違う治療をしている…という流れに多少警戒心を持っていたようなのですが(自然な警戒心かもしれませんが、断じて怪しいことはしていません。)改善されたお母様の様子に、警戒を解かれたご様子。元々インテリジェンスが高いご家族なので、コウノメソッドに関する本も読まれ理解を深められたとのこと。熱心なケアマネージャーさんの説得あってこその展開。そしてご家族に本をお渡ししたのもケアマネージャーさんでした。Good jobです。伊藤さん、ありがとうございます!

私は直接的には診察室に入ってきてくれる方しか診察できませんが、地域に頼りになる仲間がいれば、その方が患者さんを診察室に連れて来て下さる。必要な方に必要な治療を届けることが出来る。そんな熱いつながりに、ただただ感謝。この方がもっと良くなって喜んで頂けるよう頑張ろうという勇気をもらいました。

仲間

写真はナラティブケアのメンバーの一部。本当に心強い存在です。

追記)

この方はその後他院で胸やけを訴え、ガスターDを処方されました。飲み始めて3日目の朝に久しぶりに幻視妄想が出現。当院に電話を頂き、内服中止を指示しました。ガスターはヒスタミンH2受容体拮抗薬で、副作用として幻覚妄想をきたすことがあります。薬剤に過敏性があるレビー小体型では特に注意が必要です。