そこからは、週1回夜中のスカイプ(顔が見えるインターネット電話)が生活の一部となりました。通常は開業支援と言えば、もっぱら不動産探しや業者の紹介、書類作成などの業務をさしますが、それはOさんいわく「作業」なのだそうです。
それよりも最初に大切なのは「マインド」。自分の強みは何か、クリニックの理念は何か、自分の医療を求めている患者さん(ペルソナ)の姿を、内面的な悩みも含めてどれほど詳細にイメージできるか。
次から次へと‘ワーク’と呼ばれる課題が送られ、このシートを埋める作業は、非常に新鮮でした。経営やマーケティングという言葉に対して、お金ばかり追いかけるようなネガティブなメージを持っていた私でしたが、実際には逆であるということも教わりました。患者さんにとって本当に必要なことは何で、それをどのように伝えるかという行為なのだと知りました。自分のこれまで行ってきた医療、地域の中での自分の立ち位置、これからこの地域で求められることはどんなことか、などを深く考えるきっかけとなりました。
不動産が確定していないこの時期は、開業準備に関してはまだ余裕があり、コウノメソッド(認知症)の講演のご依頼はできるだけお引き受けするようにしていました。一人でも多くの方にこんな診療があるよ、と知って頂くことが、まだ見ぬ誰かの命を救うことになると信じているからです。講演やセミナーなどに参加するたびに、志を同じくする仲間の輪が広がっていくことにも心強さを感じていました。病院の外の仲間が増える度に、地域に対する愛着が増し、今こそ地域に出ていく時だ、と感じたのです。