先日30歳代のアウトドアをしていそうな精悍な男性が、数時間からの心か部の「キリキリした痛み」で外来を受診しました。当日の朝から、手がかゆかったようです。何となく話の感じから、ほのかなデジャヴ(既視感)が。

「昨日の晩は、何を食べました?」
「イワシの刺身ですね。」
「たくさん?」
「結構たくさん。」
当院は一人医師体制ですし、胃カメラはいつもは朝一番からしか行っていません。その日の午後も外来はボチボチ賑わっていましたが、こりゃ緊急カメラかも。空振りかもしれないけれど、とあらかじめ言い訳したところ、それでもいいから早めに胃カメラをやりたいと本人。よほど痛かったのしょう。

実際胃カメラを挿入してみると…

アニサキス

いました!!!今話題のアニサキスです!

アニサキスの白い虫体が、胃の粘膜に頭を入れて動いているのを見ると、お~~と身震いします。ハンター、しっかりしとめなくては。鉗子でそっとつかんで抜き取り捕獲に見事成功。(なんのテクニックも要りません)取り出してみると白い糸くずのような小さな虫ですが、こいつが健康な若者を苦しめていた犯人です。内視鏡が終わった時点で、男性の痛みは早くも軽減傾向になったようで、笑顔を見せてくれました。このすっきり感は、なかなか格別です。
前勤務先の市立病院でも、同様に緊急胃カメラでアニサキスを取り出す経験をしました。その時はスカイツリー観光で鯖寿司を食べたマダムでしたが、検査前の痛がり方と終わった後のケロッとした感じも似ていて、やはりアニサキスはタイミングを逃さず検査するに尽きるな、と改めて。2匹目のどじょうならぬ2匹目のアニサキスでした。

2012年に食品衛生法が改正され、診断した場合は全件保健所に届け出となっています。そのため報告数が急増などと報道されていますが、元々アニサキスそのものは魚屋さんにとっては比較的よく遭遇するもので特別珍しいということはありません。そうは言っても寄生された本人は七転八倒のしんどさですから、友人がロシアンルーレットに例えたのもわかるような。取り扱っている飲食店には正直申し訳ない気持ちですが、国として動向を把握する必要性がありますので臨床医としてはルールに従わざるを得ません。自己責任で、でも美味しくお刺身を食べて下さいね。