こんにちは。

先日蒸し暑い日に祖父母の家を訪問して玄関先で見たものは…

かき氷

子供が大喜びしたことは言うまでもありません。全力で孫守りしてくれる両親に感謝です。

今日は、もの忘れ外来の告知のお話です。

もの忘れ外来の初回には、必ず30-40分くらい時間をかけます。そのせいで常に2か月待ちとなってしまい心苦しいのですが、一応私なりの理由があります。一つはまだ熟練した認知症医ではないので、落ちがないように決まった流れで診察を行うため。そしてもう一つは、この外来は診療のみならず‘告知’の場でもあるので、患者さんと家族の心にも配慮したいためです。
目の前の患者さんは、医者からすれば毎日沢山見ている患者の一人で、「認知症なんだから、そりゃあ幻視も妄想もよくあるよね。」となりがちですが、家族にとっては違います。大切なお母さんが変なことを言いだした!という事実は、大きな哀しみや喪失感、これからやって来るかもしれない介護が自分の生活に与える影響など、色々なことが頭を駆け巡る、一大事件です。
ある日、診察中にイスに座っていられないほどソワソワ落ち着かず、帰る帰ると繰り返すピック病の患者さんの娘さんが、思いつめた表情で
「先生、母は、認知症なんでしょうか?」
と聞いてきて、驚きました。正直、え、今さらそこ?とその時は思ってしまったのですが、後で振り返ってみると、その方は下痢をきっかけに私の内科外来に通うようになった方で、あらたまった形での告知をしていなかったのです。言わなくても明らかだよね、というのは専門家の驕りだと反省しました。
認知症であるという事実は、当の本人にとっても足元が崩れるような不安を覚えることは言うまでもありません。状態を客観的に把握できる初期の方ほど、衝撃は大きいと思います。自分でも以前とは違う…と薄々感じてはいるし、家族にも知人にもやたらと心配されている。だからこそ受診してはっきり診断されるのが怖いし、年をとればみんなこんなものなんだと言い聞かせたくなるのでしょう。もの忘れ外来に来られる多くの方が、何を聞かれてどんな病名を言われるのだろうと緊張して少し硬い表情で外来に見えます。そういう方に、診断名だけポンと伝えて「じゃあ薬だけ出しておきます。」というのは、あまりにもお粗末です。可哀想という心情論だけではなく、ネガティブな印象だけが残って「あんな所にはもう2度と行きたくない!」と通院を中断する結果になるので、ダメなのです。
「本人には認知症の薬だと言わないで下さい。」と家族に言われることもありますが、これも原則的にはよくないと思っています。以前には、家族にお願いされて、訳のわからない別の説明をして薬を出した経験もありますが、うまくいきませんでした。2回目以降の診察で話のつじつまが合わなくなっていくからです。何でもないのになんでここに来なくちゃいけないのか、何で薬を飲まなきゃいけないのか、という風になりますし、診察室でご本人の生活のこと、薬の具体的なことを話しにくくなります。(介護抵抗が非常に強かったりという時は例外です。)
本人も含めて病状はしっかりと説明をする前提で、私自身が意識していること。それは必ず「希望を一緒に贈る」ということです。希望と言っても、実は全く大それたものではありません。それは、今本人が持っている‘宝’に焦点をあてること。放っておくと、人は既に持っているものはあたりまえだと思い、失ったものを嘆く傾向にあります。少々もの忘れをしたとしても、自分のことは自分でやれている、家族の洗濯をできている、一緒にお茶を飲むお隣りさんがいる、診察に付き添ってくれる家族がいる、自分の足で歩けている、畑に出て草とりをしている。そんな自分や家族の‘あたりまえ’は、他の人からすればとても羨ましいことがしばしば。
「この年齢で杖もつかずに歩けてどこも痛くないなんて、珍しいですよね。」
「草とりをしてくれる人がいてくれると、本当に助かるんですよ。うちに来て頂けません?」
「この血液検査のデータじゃ、たぶん100歳くらいまで生きちゃいますから、頭もちゃんとしておかなきゃ大変ですよ!」(え~嫌だ~と本人も家族も一緒に笑ってくれます)
そんな風にいいところをはっきりと言葉にした上で、
「5年後10年後も、今と同じように家のことをしっかりできるように、薬を飲んでみませんか?」
と続けます。言葉あそびだと言われればそこまでですが、あなたは病気だから薬を飲むんですよと言われるよりも、あなたのいい所をずっと維持するために薬を飲んではどうですかと言われる方が、気持ちよく受け止められませんか。私は単純でほめられるとすぐ木に登るタイプなので、自分だったらそう言われたいと思い、そのようにお話をしています。
「認知症は患者さんの数も多いし国が全力をあげて対策に乗り出しています。コウノメソッドは年々どんどん進化していますよ。今何とか踏みとどまっていれば、来年再来年にはもっといい薬が出ているかもしれません。がんばって踏みとどまっておきましょう。」
とご家族にも。自分自身心からそう思って進化していこうと思っていますし、患者さんや家族の不安が強くなるといいことは一つもないと思うからです。少しでも不安な気持ちを和らげて、明るい気持ちで生活できる助けになりたい。そんな風に思っています。

家族の力

写真は、薬をガリガリと噛んでしまい、苦いので吐き出してしまっていた患者さんにご家族が工夫された薬缶のフタです。創意工夫と遊び心があっていいですね。頭が下がります。