花粉症に関する院内セミナーを行うにあたり、お知らせのチラシを笠間市内の新聞に折り込んで頂きました。チラシを見て来て勉強会に下さった方が圧倒的に50-60歳台の方が多かったため、新聞なんてとってないし、とインターネットやスマホを日常使いする若めの年齢層にも読んで頂ければ…と思い、原稿をアップさせて頂きます。

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花粉症の点鼻薬についてのお話です。

「病院の薬より、ドラッグストアの鼻スプレーの方がスカッと効くんだよ~。」

だから病院の点鼻薬はいらないと言う男性患者さんがいました。

その方の言う通り、市販の点鼻薬の方が、噴霧した時点での改善効果を実感しやすいのは事実です。血管収縮剤という成分が入っており、噴霧してすぐにグジュグジュ出ていた鼻汁がピタッと止まり、鼻がスーッと通るためです。そのため、常に市販の鼻スプレーをポケットに入れて、しょっちゅうシュッシュッと鼻に噴霧しているのでしょう。血管収縮剤が含まれた点鼻薬の添付文書には「使用回数は1日2回まで 原則として2週間以内とする。」などと注意が書いてあるのを、その男性はおそらく読み飛ばしている(もしくは最初から読む気がない?)可能性があります。

これは実はかなり要注意!です。血管収縮剤は鼻の粘膜の血管を一時的にギュッと収縮させることで症状を緩和させていますが、効果は長くは続きません。その種の点鼻薬特有のスカッとした爽快感が忘れられず、ついついひっきりなしに点鼻薬を噴霧する「点鼻薬依存」を起こしやすいのです。 しかしこの点鼻薬の頻用には、大きな落とし穴が。頻回に点鼻を行ううちに、鼻の粘膜が腫れあがり分厚くなってしまう薬剤性肥厚性鼻炎のリスクです。通常の鼻づまりは片方ずつ交代ずつつまるよううまいこと出来ています(nasal cycle)が、このタイプの鼻炎は左右両方ともつまります。あれほど頼りにしていた点鼻薬が原因で、その点鼻薬も効かない強力な鼻づまりに陥るという本末転倒な展開に。この点鼻薬離脱プログラムなるものがあるほどで、それでも症状が改善しない場合には、レーザー治療や鼻腔内の粘膜を剥がす手術が必要となるケースまであるのです。

医療機関で処方されることが多い点鼻薬はステロイド点鼻薬です。こちらは血管収縮剤タイプと異なり、シュッとしてすぐに効果が得られるということはありません。効果が出るのに数日~1週間かかります。どうしても血管収縮タイプを使いたい!という場合は、くれぐれも使用方法(1日2回が望ましい)を守って期間限定で使うことをお勧めします。

この事実を知った時、私は「そんな大きなリスクを持ったスプレーがドラッグストアで誰にでも買えてしまう」という現実を、怖いと思いました。自己責任という言葉で片づけてしまっていい問題ではないようにも思います。医療費削減という目的もあり、市販薬として購入できる薬の範囲は広がっています。しかし、薬には使用方法を誤ると、大きな健康問題が起こるものも多くあります。きちんと情報のアンテナを張って「自分の身は自分で守る」という姿勢が求められているのも事実です。

あなたの近くで「これがないと困る…」と言いながらシュッシュッと市販の点鼻薬を使っている方がいたら、ぜひこの大切な事実を教えてあげて下さいね。