先日のもの忘れ外来は、少しだけ珍しいパターンでした。何が珍しいかと言うと…アルツハイマー型らしい男性の息子さんが、詳細な記録を持参して下さったところが。

性格)子供や孫を可愛がる穏やかな性格だが、友人は多くない。妻が数年前に亡くなるまでは、家の建築、子供の進学や結婚などライフイベントから日常的な金銭管理までほとんどのことを妻が行っていた。

約5ヶ月前から認知症症状が悪化した。

症状は主に3つ。

●もの忘れ

同じものを何度も買ってしまう。冷蔵庫に賞味期限切れの食材が沢山ある。

曜日の感覚も鈍い。つい先ほど言ったことを数分後には忘れている。薬をなくしてしまう。

●運転が下手になる

当初は夕方の運転が不安だと言う→車を何回かぶつける。

●意欲に乏しい

ゴミを片付けられずにゴミ屋敷のようになっている。熱心に行っていた菊栽培への関心が薄れる。

風呂に入らずシャワーで済ませる、犬の散歩をしなくなる。

先日眼科の手術を終えたばかり。当初は両目の予定だったが、術中に目を動かしてしまう、点滴自己抜去、病棟内で歩き回ってしまうなどの症状から、もう片方は手術できずに退院となった。

先日のもの忘れ外来にて)

・身なりはスーツできちんとしており、疎通性も良好 河野先生がいう「どこにでもいる隣人」

・家族が病状を話すと「年のせいだから」=病識なし

・長谷川式は14点、遅延再生 0/6,  時計描画できず(数字は正しく書けるも10:10が書けない)

・歯車様固縮・振戦はなく歩行もスムーズ

・ピックスコア0点,  レビースコア2点(日中の傾眠のみ)

・頭部CT

ATD1  頭頂葉の萎縮, 海馬萎縮 2+

ATD2 ラクナ梗塞散在, 前頭葉萎縮が意欲低下の一因か。

アルツハイマー型+脳血管型の混合型と診断しました。HbA1c8%台と血糖コントロールが不良で合併症である動脈硬化がしていることが、症状を修飾していると考えます。これまですべてを妻に任せてきたため、現在出来合いの惣菜などの生活になっていたこと(現在はセブンミール宅配も利用)記憶障害で糖尿病の内服薬が途絶えていたことも悪化因子でしょうか。

処方は、初回はプレタールOD 100mg(アミロイドβの排出を促進する作用あり)と糖尿病に対するジャヌビアのみです。明らかなBPSD(行動心理症状)がないため、ドネペジルから開始してもよかったと思います。(緊急性がない場合には、薬剤は一回に1種ずつ開始するようにしています。副作用が出た時にどれが真犯人かわからなくなるため。)

今後検討)サアミオン, 人参養栄湯, フェルガード100Mプラス,プロルベイン, プラズマローゲン?

趣味である獅子頭づくりや植物の栽培に取り組める意欲が戻ってくることを一つ目のゴールにします。穏やかながら寡黙な方のようで、自分から人とコミュニケーションをとる方ではないようですが、ほどよい緊張感が脳血流を活性化することを期待してデイサービスへの参加もお勧めしました。ジャヌビアやプレタールの内服見守りを、デイサービスでお願いするというのも一つの方法です。空間認知能の低下が予想され、現に何度も車をぶつけているようなので、運転はやめるようにお伝えしました。

それにしても、A4用紙3枚びっしりの詳細な経過用紙は、レビー家族の専売特許かと思っていました(笑)情報量の多さに、ただただ脱帽。この記録があるのとないのでは、情報量は雲泥の差。ありがとうございます。お父さんを大切に想う息子さんの気持ちを感じ、その思いにしっかりと応えたいところです。