4月14日認知症治療研究会(@中野サンプラザ)にて。最近勉強してきた神経難病のケースを発表させて頂きました。尊敬する先生でもあり同志でもある松野先生(市川フォレストクリニック)と中坂先生(新横浜フォレストクリニック)の両先生とのコラボは、私にとってとても居心地がよい空間です。

中野

CBS(大脳皮質基底核変性症)やPSP(進行性核上性麻痺)は経過としては非常に厳しい病気です。治療の重要ポイントの一つが「認知症の薬を使わないこと」!合う薬がかなり限定されて、よくならないから…と焦って薬をどんどん増やしていくと(パニック処方)、副作用であっという間に泥沼にはまります。

大脳皮質基底核変性症と診断された80歳台後半の男性。数分もじっと座っていられない、夜も眠れない、トイレ以外の場所で用を足すという状況で、奥様が疲れきっていました。私一人で深みにはまりかけているところで、スーパー神経内科の中坂先生(新横浜フォレストクリニック)にSOS。先生のご指導の下で処方を調整した患者さんが変わっていく様を刻々と前にして、本当に勉強になりました。

先日の外来で、だいぶ穏やかな状態になったと奥さんは喜んで下さり。

「最近は大好きな野球や相撲のテレビ番組も見ていられるようになり、夜も眠れています。以前のように洗濯物を干すのを手伝ってくれたりもしてくれるんですよ。」

一方で息子さんは、こんな風なコメントを。

「母はよくなったと言っていますが…正直僕はまだあまりそう思えません。失語だって治っていませんし、見当識障害もあります。他にもう少しよくなる薬はないでしょうか?」と。

とっさに返す言葉が見つからず、固まってしまいました。超高齢で、大脳全体が障害を受ける病を患ってもなお、息子さんにとっては‘偉大な父’であり続けてほしいのでしょう。その気持ちは、心情としては痛いほどわかります。しかし同時に思ったのは、その「絶対あきらめない」と切望する気持ちが、苦し紛れに薬を増量し、結果的に本人の体を決定的に追いつめてしまうのかもしれないと。私には、おそらく息子さんのご期待に100%応えることは難しいと正直にお伝えしました。(もちろんこの方の最善を引き出す努力は続けますとも。)

「まだやれることがある」と「ここは受け容れてつきあっていこう」の線引きはしばしば曖昧で線引きが難しいです。これまでの経過で絶望し、希望を求めて来院された方に自分の限界を伝えるのは、これまでの私にとって苦手でできれば避けたいことの一つでした。それでもあえて線引きをしなくてはいけないのは、それが家族のいい意味でのあきらめや受容を促すきっかけになるから。

愛情をもって引導を渡し、それでも変わらずにご本人や家族に伴走し続ける決意を伝える。それによって本人や家族が「治せない医者」として離れていくのであれば、そこまでの信頼関係だったと思うしかありません。主治医としても、覚悟を決めます。